みんなのカルテ 第二回 報告書
2011年12月11日
症例収集期間 2011年10月21日〜12月10日
報告全体件数 285件
子供に関する報告件数 73件
症状全体数 163件
子供に関する症状数 79件
付帯資料
1.症例報告者の分布図
2.部位症状分類人体図(全体)
3.部位症状分類グラフ(全体)
4.部位症状分類人体図(子供)
5.部位症状分類グラフ(子供)
症例報告者の分布図
解説
1.症例報告者の分布図
放射能汚染による症例の発症が、米国科学アカデミー発表のセシウム137土壌汚染図と符合するという点については、先月、追加として資料を掲載した通りである。先月以降、奈良、京都、山梨など幾つかの県からの報告が加わったものの、症状と土壌汚染の関係は、ぴたりと密着したまま大きな変化はない。先月とほぼ同一の地域からの報告の増加、報告者の追記により症状の悪化、が見て取れる。
こうした中でも300キロ圏内では、例え周囲が放射能汚染に無理解であっても、、自身に症状があれば、「汚染地帯である」という認識が強くその症状がいったい何故発症するのかを探ろうとするが、いわゆる一般的に汚染地帯と呼ばれる300キロから汚染がゆるやかにフェードアウトし、汚染地域とそうでない地域が混在する「あいまいゾーン」(300キロ〜600キロ圏)は、「汚染は300キロ圏内」という意識が強く、自衛に対する意識が低くく、無防備に被曝するために、複数の症状がありながらも、それを被曝と関連づけて考えることができていない、しようとしない、という状況がおきている。当然のことながら「あいまいゾーン」は場所によってはほぼホットスポット同然の地域があり、症状そのものは汚染地帯のそれと変わりない。「あいまいゾーン」に暮らす人々には、300キロ圏内に暮らす人々以上に放射能汚染に対する自覚と注意が必要である。
繰り返しになるが、遠く離れれば安全であるという認識は非常に危険である。食や土壌汚染、また大気の流動があるかぎり、距離を過信してはいけない。放射能汚染は、それがどれくらいの量あるかの問題ではなく「あるか、ないか」の問題で、距離に関係なく、発症がある場合どこにいても発症は発症として変わりなく、離れているから軽度ですむ、という考えは間違いである。
上記の「あるか、ないか」の問題を踏まえていただければ理解していただけると思うが、報告のあった地域は、現時点では単にそこから何人が症状を報告をしてきているかを示すものであり、報告数が1件しかないからと、その1件を軽んじてはいけない。
例にすれば、北海道からはわずか4件の報告があるが、内一件に下記のような内容がある。
「カルテ番号230 皮膚湿疹
北海道消化器系自己免疫疾患患者 (男性)
2011/11/16 (Wed) 21:51:22
8月26日に千歳空港近郊のゴルフ場へ、女子プロゴルフを観戦に行った時、雷雨があり、一時中断でテントに非難していたため濡れなかったのですが、再開後タオルを首に掛け汗拭きにしていたのですが、それを落としてしまい水道でよく洗わず首に掛けていたところその日の夜から首の後ろのタオルを掛けていた所があせものような湿疹ができました。痛いような痒いような状態が1週間ほど続きましたが、何もせず治りました。後日300キロ以上離れたオホーツク海側の自宅でもビニールハウスにたまった雨水を頭から首に掛けて浴びたときも同じような症状が出ました。そのときも何もせず1週間ほどで治りました。」
放射能発生地から遠く離れた北海道で、この男性が落としたタオルを首にかけ湿疹が出たのは汚染発生からすでにおよそ6ヶ月経過してのことであり、300キロ以上離れたオホーツク海側ビニールハウスの雨水でも同じ内容の症状を繰り返している。
こうした例を軽んじていなければ、春から夏にかけて北海道のいずれかの牧草地に大気や雨による汚染があり、放牧された牛たちがそれを食んでいたことは見分けのつくことで、乳児用のミルクについても事前に調査すべきことぐらい、察しのつく話である。
人命を守るためにも、周囲の状況を把握するためにも、国に依存せず、地域の人々の手で健康調査を早急に行ない、正直に公表していただきたい。
全体
子供
2.部位症状分類人体図およびグラフ
今月、大きな特徴としては、一人あたりの症状数の変化である。全体は、前月の3.96症状から4.5症状へ、子供は3症状から3.6症状へと増加した。また、追記により悪化および新たな発症など症状の進行が10.8%の報告に見られた。全体、子供共に、気管支、皮膚、全体の疲れは先月と変わらずトップ3であり、著しい増加が見られる。また、感染症も増加傾向にあり、免疫力の低下が見られる。この免疫力の低下は症状の悪化、新たな症状を誘引しているものと思われる。
何度も検証したが、症状には、この症状が出たら、次はこれ、というようなパターンがない。個人によってまちまちで、次にどこに新たな症状が生まれるのか予測がつかない。十分な精査が必要だが、血族における症状、例えば母親に湿疹があり、子供にもあるというような類似性がありうるようにも思えている。
また、今回の記録としてここに是非とも筆者個人が記しておきたいことがある。それは、不定愁訴や症状という具体性をもった報告ではなく、人々の過度なストレスについてである。特に、新生児を抱える母親は行き先の不安と新生児を守るために異状なストレスに晒されている人も少なくない。夫が出勤し、上の子を幼稚園に送り出し、台所で一人嗚咽する、そういう母親がいることを少しでも多くの人に知ってもらいたい。
何度も検証したが、症状には、この症状が出たら、次はこれ、というようなパターンがない。個人によってまちまちで、次にどこに新たな症状が生まれるのか予測がつかない。十分な精査が必要だが、血族における症状、例えば母親に湿疹があり、子供にもあるというような類似性がありうるようにも思えている。
また、今回の記録としてここに是非とも筆者個人が記しておきたいことがある。それは、不定愁訴や症状という具体性をもった報告ではなく、人々の過度なストレスについてである。特に、新生児を抱える母親は行き先の不安と新生児を守るために異状なストレスに晒されている人も少なくない。夫が出勤し、上の子を幼稚園に送り出し、台所で一人嗚咽する、そういう母親がいることを少しでも多くの人に知ってもらいたい。
多くの母親は、こどもを守るために必死で情報を収集し、そうした情報を夫と共有できていない場合、また、夫が放射能汚染にそもそも無関心である場合、夫との感情的な乖離が甚だしく、子供を避難させられない自分、避難に無関心な夫に絶望的な感情をいだき、自分自身を責める傾向にある。放射能汚染からの避難に対する考えの違いは人々の命に対する倫理観を露呈させ、時に、絶望の淵へと追いやる。そのため、放射能汚染に対する考え方、受け取り方の相違のために、他者との関係が断絶したり、避難に際し離婚したケースも多く、たとえ家族で避難したとしても家族内に不協和音が生じている場合も少なくない。
持病の悪化、身体的障害などにともなって経済的困難がある場合も心理的に追い込まれるケースも多く、筆者あての多くのメールに「切羽詰まって気が狂いそうになる」「自殺をたびたび思います」「いっそ、もう一度爆発してくれたらと思います」という言葉があるのは珍しいことではない。これらは具体的に「症例」として記録されることはないかも知れない。しかし、数々の症例と同じか、あるいはそれ以上に深刻な問題であることを、ここにどうしても記しておきたい。発症者の増加もあるが、自殺者の増加も今後十分にありうる、と非常に懸念している。
こうした人達は、自身を責めることなく、自分の感情を共有できる人々との繋がりを見つけてもらいたいと切実に思う。精神的なケアを必要とする人々は症例を抱える人々以上に存在するものと思われる。多くのセラピストにも放射能汚染の問題に目を向けて欲しいと切に願っている。
避難移住
避難移住は先月6.7%(192件の内13件)であったが、当月は285件の内17件、全体では5.9%と下がっている。筆者の感覚ではおそらく、放射能汚染に対する危険を東電放射能汚染の以前に知識として理解していた人々、それを含む何らかの気づきにより、避難の判断がその時点でできた人たちが11月以前に避難したと推測している。年度末、子供の進学など区切りを避難のタイミングとして考えている人たちも多い。
11月21日から12月5日にかけて、避難を検討しながらも躊躇する理由をアンケートした結果によれば、仕事および学校の問題があり躊躇するとの答えが57%、経済的理由によるが16%、家族周囲の理解が得られないが15%、ほんとうに必要かどうか分からないが10%、その他が2%である。半数以上が仕事および学校の問題があり躊躇すると答えたわけだが、仕事は大人の判断であるが、学校について筆者は、被曝してでも学校に行って欲しいのだと解釈せざるを得ない。
11月21日から12月5日にかけて、避難を検討しながらも躊躇する理由をアンケートした結果によれば、仕事および学校の問題があり躊躇するとの答えが57%、経済的理由によるが16%、家族周囲の理解が得られないが15%、ほんとうに必要かどうか分からないが10%、その他が2%である。半数以上が仕事および学校の問題があり躊躇すると答えたわけだが、仕事は大人の判断であるが、学校について筆者は、被曝してでも学校に行って欲しいのだと解釈せざるを得ない。
また、実際、経済的な理由で避難できない人たちも大勢いる。強制避難だけでなく、自主避難においてもいくつかの点で多くの助けが必要なことは事実である。母親だけの家庭、持病を持つ人、障害を持つ人、こうしたいわゆる弱者の自主避難については、受け入れ可能な地域の積極的理解が必要である。アパートの保証人など経済的面からだけでなく準備を整えられないケースも多く苦慮している。また、そうでない場合も、現在の家屋に多くのローンが残っている場合もあり、これも同じく受け入れ可能な地域が現地金融機関の相談窓口などと連携し窓口の状況などを把握しておいてもらえれば、避難希望者が一歩を踏み出す手助けになると感じる。
12月を過ぎて少しづつではあるがマスメディアにも「症状」「症例」という言葉がまれに現れるようになった。 いずれにせよ、症状を抱える人々は更に増加すると思われる。 多くの人々に症例のあることが更に表立ち、春休みで学年の切り替わりが行われる時期前後、第二期の避難が行われると推測する。
受診
報告の内35%(285件中100件)が医療機関を訪れており、受診率も上昇傾向にある。また、医療という意味においては、11月28日、健康被害に備え「歯」「毛髪」保存が福島県内ではじまった。歯髄細胞を将来の治療に用いるため、また被曝のエビデンスとして毛髪を保存するためである。特に、「毛髪」については理容、美容業界が中心となっている。さらに個人により、分娩異常(早産など)も含め、通常では起こらないことが子供や母体に起こっていると感じている人たちが情報を共有し困難に立ち向かうためのフクシマハートネットワークが立ち上げられた。いずれにせよ、こうした活動は市井の人々の手によるもので、医療の立場から率先してこのような活動が行われていないことは非常に残念である。
被曝検査をうたい文句に検査を行うクリニックなども登場している。十分に注意して欲しい。
また、医療機関での対応もさまざまであるが、医療従事者より自身に汚染後に症状があり、被曝関連文献を読み込んでいるために、医療関係者よりも被曝に関する知識が多い、という人々も大勢いいる。こうした背景から、受診時の医者の対応に不安や不満な声も漏れ聞こえてくる。
医療界に被曝医療に対する早急な対応が求められている。
Research and report Shino Yasutomo




