第四回報告書
症例収集期間 2011年10月21日~2012年8月10日症例報告全体件数 529件
症例分類 31科目 270症状
解説
1.症例報告者の分布図
福島第一原発事故後、17ヶ月目の症例報告者の分布は、図1の着色部分にあるようにほぼ全国に広がっている。わずかに残された無着色のエリアには避難者が暮らしていることを考えると、全ての県に症状のある人々が暮らしていることになる。当初から申し上げているように、そして、何度も申し上げるが、日本全国のあらゆる分野の医師たちに被ばく医療に対する理解、見識が必要なことは言うまでもなく、このことは急務である。

改めて届けられた症状を繰り返し読み直し、再度の聞き取りをしたところ3月11日から21日のフォールアウトの間、特に3月14日、15日にどのように行動したか、どこにいたのかが下記「2.症状」に述べる急激な症状の進行の要であると推測する。( 参照1:http://frmr-jp.blogspot.com/2012/09/20113.html)
放射性物質が気流にのり拡散しフォールアウトしたわけだが、事故の際、地近隣市町村にいた人たちは無論、グランドゼロから、200キロ前後圏内であれば、この大気下で戸外にいた人、放射能感受性の高い子供、持病を持つ人々から、まず極度に進行した発症があり、これは、高濃度、高線量の放射線核種を吸気よりまず取り込んだものと思われる。現時点(2012年9月)で甲状腺、白血球への影響、癌の発症が現れており、核種の影響を考えれば症状の進行のスピードは納得できる。また、1月から2月にかけて骨の痛みを訴える人が4倍、2月から3月にかけて筋肉の痛みを訴える人が2倍という異常に突出した伸びを見せていることも、高濃度、高線量の放射線核種の影響を反映していると思われる。
フォールアウトの大気が通過した地域の人々は全て自身の体調の変化を注視し、血液検査、甲状腺エコー検査の結果を把握すべきである。少なくとも、子供たちの甲状腺エコー検査は症状の自覚がある、ないに関わらず行うべきである。内部被ばくとして話題にのぼる「蓄積量」の問題もさることながら、今回の事故の場合、時間的な観点からは、現時点においては、高線量放射線核種にあたったか否か、が非常に大きな症状の理由である。
また、地形による気流の影響で、太平洋岸からの風が内陸部に吹き込み、山脈でせき止められる。そのため、250キロ圏内では太平洋に向かい背後に山を抱える麓からの報告があるのも特徴的である。特に大気の流れの悪い都市部での汚染の「都市濃縮」、高い地域から低い地域への「濃集」が予測される。従って、先の懸念とかね合わせて言えば、都市に滞在していればいるほど高線量放射線核種にあたる確率は高くなる、ということになる。
首都圏の汚染がどこまで進んでいるのか、については気になるところである。そこで、4月に発表された東京の東、足立区の小中学校延べ70校の地上5センチ、と50センチの平均を出してみた。(参照2
https://docs.google.com/spreadsheet/ccc?key=0Aq8f83tqq7QudGxiLW9hVVZtVE9qanZzdnhSYlBmc3c)
5センチで0.65マイクロシーベルト、50センチで0.40マイクロシーベルトである。二つの平均値として、地上50センチまでは0.53マイクロシーベルトである。つまり、一日4時間戸外で過ごした数値に、自然放射線量1.4ミリシーベルトを加算すると年間、4.30ミリシーベルトの被曝量となる。事故地から足立区までは213キロであるが、この線量は原発から25.5キロの南相馬市の太平洋沿いの地域一体とほぼ同等か(参照3: http://www.city.minamisoma.lg.jp/mpsdata/web/5462/minamisoma_120416.jpg)、場所によっては、それより高い。首都圏の多くの人々は、福島の汚染を憂うか、何事もなかったように過ごしているが、自分たちも同じ環境にいることを自覚すべきである。
2.症状
一人あたりの症状数は、1月の4.9症状から5.6症状へと増加した。(参照4:https://docs.google.com/spreadsheet/ccc?key=0Aq8f83tqq7QudDNMTWdaS0c3Qkd5QnBWOHZwSXJLOEE)
どの科目も、前回の調査と比較すると平均1.1~1.2倍の増加率である。この平均増加率を上回るものとして、嘔吐、吐き気に関する上部胃腸管1.3倍、 下垂体腺腫、嚢胞種を含む腫瘍1.4倍、 主に甲状腺に関する内分泌器系1.6倍、がある。
癌の前段階と見て取れる内部分泌系症状が急増している。また、原発から250キロ離れた関東、首都圏からも子供の甲状腺癌に関する知らせが相次いでいる。つまり、受診により甲状腺癌と病名が確定する以前、癌の萌芽は少なくとも福島原発事故後、一年以内には育っていたもことになる。チェルノブイリでは子供たちの甲状腺癌が5年から10年かけて進行したわけだが、その3分の1の期間で癌化したことになる。福島第一原発事故による身体への影響として、癌は1年から1年半で発症し、 症状進行のスピードはチェルノブイリの3倍から5倍である。
福島県の子供 3万8114人に実施された甲状腺検査では、全体の35.8%にあたる 1万3460人に甲状腺のう胞や、しこりが発見された。チエルノブイリで一年後に人口の5%に何らかの身体症状が現れたわけだが、福島では年間その7倍の発症のあったことになる。
結論として、チェルノブイリとの比較では、発症のスピードは3倍から5倍、発症は7倍以上(ただし、人口比率に注意)と推測する。
調査開始から、当月まで恒常的に増加している症状に、倦怠感、眠気、頭痛、目眩、湿疹、蕁麻疹、痒み、鼻血、口内炎、喉の痛み、胸痛、咳、痰、下痢、がある。女性からの報告には、生理周期が乱れる、量が少なくなった、無月経になった、などの症状が、大人にも子供にもともかく生理があれば、ほぼ100%に見受けられる。
また、冬から春にかけてインフルエンザの爆発的な拡大、梅雨の季節の0-157などの食中毒、風疹などあらゆる感染症の異常な増加がある(参照 国立感染症研究所 感染症情報センター)。抵抗力の低下のために感染症が増えている、という見方もできるが、一方でこのような症状は白血病の初期症状にもあてはまる。倦怠感や伴う風邪のような症状、鼻血、が白血病のメルクマークでもあることは病理的事実である。昨年から一向に後を絶たない、風邪のような症状が、白血球の変化によるものだとした場合、発症数は今後、想像を絶するものと思われる。同時に、白血球、特に好中数などの異常についての報告はすでに多い。
血液関連報告一部(下記いずれの報告も半径250キロ圏内)
・身内が、10万人に1人という慢性骨髄単球性白血病
・50歳男性、東村山在住。今年3月健康診断で引っかかり、白血病診断
・5歳の男児が白血病で既に入院中
・7歳兄、2012年1月には白血球1万以上、好中球43%ありましたが、6月の検査で白血球6300、好中球25%でした。3歳弟、2010年10月の検査で白血球1万以上、好中球27%。2012年6月、白血球7300、好中球28%
・6歳娘、昨年6月の血液検査でほんの少しですが白血球の減少。体重増加なし
・16歳女子、母親、白血球数の減少。娘、体重減少。血液検査の結果は(2011年11月)白血球、血小板、赤血球の数が減少。CK、GPT、ALP、リンパ球高め。
東京の西の病院でも、骨髄腫の患者が増加し、多発性骨髄腫のための薬剤velcadeの消費が増え、内視鏡を覗くと食道がんおよび食道の異常な患者が多くドクターが首を傾げている、と薬剤師からの報告がある。その他、癌に関しては、乳がん、大腸がん、などが報告されている。
また、特に、半径300キロ圏内の病院において「川崎病」と病名をもらう人も多い。川崎病とは、1961年日本赤十字の小児科医、川崎富作氏によって患者が発見され、1967年に名付けられたものである(参照5: wiki川崎病リンク/日本川崎病学会症例写真)。主な症状は眼球結膜充血、顎部リンパ節腫脹、発疹、紅斑などを伴い、原因は不明とされている。しかし、これらの症状は被ばく症状に極めて類似性が高い。
出産については、1500g未満が極低出生体重児であるが、1000g以上発育せず堕胎の報告が複数、また1000gで出生したものの心臓に穴の開いているケース、その他、早産、流産の報告が相次いでいる。特に堕胎件数は上昇していると思われる。8月29日、妊婦の血液を調べて胎児がダウン症かどうかを99%の精度で診断する検査を、国立成育医療研究センター(東京)と昭和大(同)が来月にも始める方針を決め、他にも複数の医療機関が導入を検討していることが発表された。こうした先を見越しての検査の導入、医療開発の報告などが意図的なタイミングとしか思えないほど多い。
半径300キロ圏内で目眩、難聴などの発症が顕著である。グランドゼロから20キロ圏内の至近距離で事故後、数日して激しい目眩の症状報告があったが、このような症状が、事故後1年を経過し半径250キロ内に居住の人々まで範囲が拡大してきている。関連して、中枢への影響も深刻である。
倦怠感を伴う無気力、記憶力の低下、物忘れ、筆記障害、暗算の支障、転倒などの運動障害もあるが、自己申告による報告以外の性質の変化について本人は自覚がなく、そのため、データとして収集することが困難である。しかしながら、この問題は、具体的な身体症状以上に深刻で、その数は、身体症状を伴う人々と同数か、あるいは、それ以上ではないか、と推測する。これは、今後、日本が再生してゆく中で、非常に大きな社会問題である。
精神的な症状は身体症状と同じように、精神的な持病を抱えていた人にまず悪化が見られる。例えば鬱はより鬱が深刻化する。また、性格や資質の強化が見られる。神経質であった人は、より追い詰められたように神経質になり、また逆に、心臓痛を含む身体症状が多数あるにもかかわらず症状をあえて無視し、過度に全てに対して積極的になるケースもある。現段階で非常に些細な性格や資質のこのような変化は、身体症状と同じように深刻化する。
特に、汚染地帯で倦怠感を伴う無気力の自覚症状のある場合、早い段階で避難する必要がある。症状の進行は早く、数カ月先には、的確な判断が下せなくなる、避難の意欲を無くす、行動が起こせなくなる、という状況がある。
このような非常に緩やかな、そして確かな変化は本人に自覚がない。総体として社会全体がゆるやかに変化してゆく。例えば、主従関係を重んじ、縦社会である日本は、判断に時間のかかる国として知られている一方、時間を順守し、製造業においても世界最高水準のクオリティを維持してきた。ヒューマンエラーが仕事の随所で多発し、最終的に製品が完成してすらそのエラーに気がつかない、ということもすでに発生している。
広島原爆の被爆二世、三世、四世からは流産、死産、肺炎、癌、甲状腺疾患、鼻血、川崎病、関節痛、膀胱炎、血尿、等の報告があり、先代に被曝者のいる場合、放射能感受性が高いのかもしれない、と推測する。今回の事故でこうした人達が再度被爆するということは、本当に許しがたい。
3.医療
多くの人々に自覚症状があるにもかかわらず、政府の医療体制は、現実と全く向き合わず、見せかけを作ろうことしかせず、さらには強力な隠蔽が行使されている。
その頂点に立っているのは福島県立医科大学副学長、福島県放射線健康リスク管理アドバイザー山下俊一で、山下は「200万人の福島県民全員を被験者として科学界に記録を打ち立てる」と2011年8月19日付けドイツ、シュピーゲル誌に語っている。
Yamashita: All 2 million residents of Fukushima prefecture. It is a big task and would set a science record. The government just decided about compensation payments for people affected by the nuclear accident. Through such applications we want to try to contact also those who moved outside of Fukushima.
(参照6:http://www.spiegel.de/international/world/studying-the-fukushima-aftermath-people-are-suffering-from-radiophobia-a-780810.html)
つまり、下記の通達に見られるように、子供の甲状腺の症状は積極的に放置し、被ばくによる進行がどのようなものなのか、観察しているに過ぎない。
また、この通達や、本人の無知のために、多くの医者は、体調不良と放射能との関連性について無関心か、否定的で、中には診療拒否や検査後のデータを渡さない、渡したとしても高額な料金を請求するなど悪質なものも多い。
危惧されるのは、参照1のフォールアウトのあった地域において診療する医者で、放射能汚染について無自覚あるいは否定的である場合、積極的な防御策をとっていないものと思われる。つまり、医者自身が被曝しており、中枢に症状がある可能性も否定は出来ない。医療ミスも増加するものと思われる。
**
福島の問題のみならず、世界中に原発があり、核兵器が存在している。あらゆる生物を死に至らしめ、さらには何代にも渡る世代に影響を及ぼすにも関わらず、人々は被ばくがどのようなものであるかについてほとんど何も知らない。広島や長崎のようにそれが戦争によるものであっても、チェルノブイリやスリーマイル、福島のようにそれが事故であっても、経済と軍事力の見せかけの保持のために、全ては全力で隠蔽され、まるで被ばく者はいないかのようにどの国も振る舞う。強力な隠蔽と圧力と、それに伴うその場凌ぎの対応のために、 まともな医療はどこにもない。 2010年には世界中に18125発の核兵器と436基もの原子力発電所があるにも関わらず、である。
Reported by Shino Yasutomo
Executive Director
FRCSR
ダウンロードはこちらから